遺品整理や実家の片付けをしていると、古いアルバムや木箱、書斎の引き出しの奥から、大量の絵葉書(ポストカード)の束が出てくることがあります。黄ばんだ紙に印刷されたセピア色の街並み、鮮やかな色彩が残る観光地の風景、そして知らない人々の姿。
多くの場合、これらは「ただの古い紙切れ」「故人の思い出の品」として、他の雑多な手紙や書類と一緒に処分されがちです。
しかし、その絵葉書の束を捨てる前に、一度手を止めてみてください。一見すると価値がないように思えるその一枚一枚が、実はコレクター市場で高く評価される「歴史資料」であり、思わぬ高値で取引される「お宝」である可能性を秘めているのです。
この記事では、なぜ古い絵葉書に価値があるのか、どのような絵葉書が高く評価されるのか、そして価値を見逃さないためのチェックポイントについて、詳しく掘り下げて解説していきます。
なぜ古い絵葉書が売れるのか?3つの大きな理由
「昔の観光地の写真なんて、今さら誰が欲しがるの?」と疑問に思うかもしれません。しかし、古い絵葉書には、現代の写真やインターネット画像では決して代替できない、特別な価値が存在します。その理由は、大きく3つに分けられます。
1. 当時の風景・文化を伝える「一次資料」としての価値
最大の理由は、絵葉書がその時代の空気感をそのまま切り取った「一次資料」であるという点です。特に、写真技術がまだ一般的ではなかった明治、大正、そして戦前の昭和初期にかけて作られた絵葉書は、歴史的価値が非常に高いとされています。
- 失われた街並みや建築物: 戦争や震災、都市開発によって、今はもう見ることができなくなった建物、駅舎、商店街の姿が記録されています。これらは、歴史研究家や郷土史家にとって、失われた風景を復元するための何より貴重な手がかりとなります。
- 当時の人々の生活風景: 着物を着て歩く人々、昔の自動車や路面電車、祭りの様子など、当時のリアルな生活感が伝わってきます。教科書には載っていない、名もなき人々の日常を垣間見ることができるのです。
- 書籍未収録の貴重なアングル: 絵葉書には、プロの写真家が撮影した芸術的な写真集とは異なり、商業目的で大量に撮影されたユニークなアングルや構図の写真が多く含まれています。「この角度から撮影されたこの建物の写真は、この絵葉書にしか存在しない」といったケースも珍しくありません。
このように、絵葉書は単なる絵や写真ではなく、歴史そのものを語る「紙のタイムカプセル」としての役割を担っているのです。
2. 「紙」であるがゆえの希少性
絵葉書は紙製品です。紙は、湿気、光、虫、そして時間そのものに対して非常に脆弱な素材です。数十年、場合によっては100年以上の時を経て、良好なコンディションを保っている絵葉書は、それだけで希少価値があります。
特に戦前のものは、戦争による混乱や物資不足の時代を乗り越えて現存していること自体が奇跡的です。
- 折れや破れがない
- 大きなシミやカビがない
- 虫食いの跡が少ない
これらの条件を満たす「美品」は、コレクター市場で高く評価されます。遺品整理で見つかるものは、アルバムに貼られていたり、箱の中で大切に保管されていたりすることが多く、驚くほど綺麗な状態で発見されることも少なくありません。
3. 日本文化への関心が生む「海外コレクター」からの需要
日本の古い絵葉書は、国内だけでなく海外のコレクターからも熱い視線が注がれています。海外のコレクターは、我々日本人とは異なる視点で日本の文化に魅力を感じ、特定のテーマの絵葉書を収集しています。
特に人気が高いのが、以下のジャンルです。
- 軍事関連(Military): 旧日本軍の軍艦や航空機、兵士の姿を写したものは、ミリタリーマニアや歴史研究家から世界的に需要があります。
- 神社仏閣・伝統建築: 海外から見たエキゾチックな日本のイメージを代表するテーマであり、アートとしての人気も高いです。
- 着物姿の女性や芸者(Geisha): 「ジャポニスム」の文脈で評価され、美術品として収集するコレクターもいます。
これらの絵葉書は、国内の相場を上回る価格で取引されることもあり、グローバルな市場を持つコレクションアイテムなのです。
高額査定が期待できる!特に価値の高い絵葉書のジャンル
すべての絵葉書に高値がつくわけではありませんが、市場で特に人気があり、高額査定につながりやすいジャンルが存在します。ご自宅に眠る絵葉書の束に、以下のテーマのものが含まれていないか確認してみてください。
① 戦前(明治・大正・昭和初期)に発行された絵葉書
最も基本的ながら、最も重要な評価軸は「時代」です。**明治後期から大正、そして昭和初期(第二次世界大戦前まで)**に発行された絵葉書は、資料的価値が格段に高く、コレクター市場の中心的な存在です。この時代の絵葉書は、印刷技術や紙質、デザインにも独特の趣があり、それ自体がアンティークとしての魅力を放っています。
② 街並み・建築・鉄道・港などのインフラ系
特定の地域の歴史を写した絵葉書は、その地域の郷土史家やコレクターから熱心に求められています。
- 戦前の駅舎や路面電車: 鉄道ファン(撮り鉄、乗り鉄だけでなく「資料鉄」も)にとって、廃線となった路線や今はなき旧駅舎の写真は垂涎の的です。
- 港湾施設や橋: 港や橋の建設風景、昔の船が停泊している様子は、都市開発史や海事史の貴重な資料となります。
- 城下町や商店街の風景: 地元の図書館や博物館が、地域の歴史を展示するために買い求めるケースもあります。
自分の故郷や、かつて住んでいた街の古い絵葉書は、特に強い需要があります。
③ 軍事・記念行事・式典関連
歴史資料としての価値が非常に高いのが、このジャンルです。
- 出征記念・凱旋記念: 兵士が戦地へ向かう際や帰還した際に作られた記念絵葉書。
- 軍艦・航空機: 戦艦「大和」や「武蔵」、零戦といった有名な艦船・航空機だけでなく、マイナーな艦艇の写真もマニアにはたまりません。
- 観兵式や記念式典: 天皇の行幸、陸軍・海軍のパレードなど、国家的なイベントを記録したものは人気が高いです。
これらは取り扱いに配慮が必要な側面もありますが、歴史を客観的に記録した資料としての価値は揺るぎません。
④ 昭和レトロな観光絵葉書
戦前のものだけでなく、**昭和30年代から50年代(1955年〜1984年頃)**の観光絵葉書も、近年の昭和レトロブームによって再評価されています。
- 温泉地や観光名所: 今はなき観光タワーや、昔のデザインの看板が写っているもの。
- 古い観光ホテルや旅館: 廃業してしまった名旅館や、建て替え前の姿を記録したものは、建築ファンや旅行好きの心をとらえます。
この時代の絵葉書は、色鮮やかなカラー印刷が特徴で、ノスタルジックなインテリアアートとして飾るために購入する人も増えています。
⑤ 消印・記念スタンプ付きの使用済み絵葉書
通常、コレクション品は「未使用」の方が価値が高いと思われがちですが、絵葉書の世界では逆転現象が起こります。実際に使用され、切手が貼られ、消印が押された絵葉書の方が、未使用品より高く評価されることがあるのです。
- 外国宛ての消印: どの国のどの街へ送られたかがわかるものは、郵便史(郵趣)のコレクション対象となります。
- 記念スタンプ(小型印・風景印): 特定のイベントや記念日に郵便局で押された特殊なスタンプは、それ自体に価値があります。
- 船内や軍事郵便の消印: 航行中の船の上から投函されたものや、戦地から送られたものは極めて希少です。
消印は、その絵葉書が「いつ」「どこから」発信されたかを証明する動かぬ証拠となり、資料的価値を飛躍的に高めるのです。
価値を左右する4つのポイントと、絶対にやってはいけないNG行動
絵葉書の価値は、いくつかの要素が複合的に絡み合って決まります。査定に出す前に、以下のポイントを把握しておきましょう。
絵葉書の価値を左右する4つのポイント
- 年代: 基本的には古いほど評価が高い傾向にあります(戦前 > 昭和初期 > 昭和中期)。
- テーマ性: バラバラの絵葉書よりも、「同じ都市の街並み」「特定の鉄道会社の駅舎」など、同一テーマでまとまっている方がコレクションとして評価されやすいです。
- 保存状態: 折れや破れ、ひどいシミがないものが望ましいですが、古いものですので多少の経年劣化は許容されます。
- 枚数: 絵葉書は1枚ずつよりも、数十枚〜数百枚単位でまとめてある方が、コレクションとしての価値が認められ、査定額も高くなる傾向が強いのが特徴です。
絶対にやってはいけない3つのNG行動
- ❌ ラミネート加工をする: 保護のつもりでも、一度ラミネートしてしまうと元に戻せず、資料価値はゼロになります。
- ❌ 強い洗剤や漂白剤で洗浄する: シミを消そうとして紙を傷めてしまい、かえって価値を損ないます。
- ❌ バラバラにして捨てる: アルバムや封筒にテーマごとにまとめられているものを、一部分だけ抜き取って捨ててはいけません。コレクション全体の価値が失われます。
遺品整理で絵葉書を見つけたら、まずやるべきこと
大量の絵葉書を前にしても、慌てる必要はありません。以下の3ステップで対応しましょう。
- STEP1:種類ごとに大まかに分ける: 「戦前っぽいもの/戦後のもの」「風景/人物」「国内/海外」といった程度で構いません。専門家が見ればすぐに判別できるので、細かすぎる仕分けは不要です。
- STEP2:出てきたままの状態で保管する: アルバムに貼られているなら、無理に剥がさない。封筒や箱に入っているなら、そのままで保管してください。
- STEP3:まとめて専門業者に査定を依頼する: 絵葉書は「量 × テーマ × 年代 × 状態」で総合的に評価されます。自己判断で価値がないと決めつけず、必ずプロの目を通すことが重要です。
まとめ|絵葉書は“捨てたら二度と戻らない歴史資料”です
遺品整理の際に出てくる絵葉書の束。それは、故人が生きた時代の証人であり、後世に残すべき貴重な文化遺産です。
- 戦前・昭和初期の絵葉書は、歴史資料として特に高い価値を持つ
- 街並み、鉄道、軍事、観光地などのテーマはコレクターに人気
- 切手や消印が付いた使用済み絵葉書は、未使用品より価値が上がることがある
- 1枚よりも、数十枚、数百枚とまとまっている方が評価されやすい
- 「ただの紙切れ」と自己判断せず、必ず捨てる前に査定を依頼するのが正解
「かいとり隊」では、豊富な知識と査定実績を持つ専門スタッフが、お客様の大切な絵葉書コレクションの価値を丁寧に見極めます。バラバラの紙片ではなく、そこに記録された歴史的背景やテーマ性まで含めて「コレクション全体」として評価。遺品整理で出てきた他の骨董品や紙もの(古地図、古いパンフレット、切手など)と合わせて、まとめて査定することも可能です。
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