お土産の「マトリョーシカ」、底にサインはありませんか?ソ連時代の古いものや有名作家作品は意外な高値に!

実家のサイドボードのガラス扉の向こうや、飾り棚の隅っこに、ちょこんと並んでいる独特の形をした「入れ子人形」はありませんか?

ふっくらとした胴体を真ん中でパカっと開けると、中から一回り小さな人形が出てきて、その人形を開けるとさらに小さな人形が……と、次から次へと人形が現れる、あの不思議な人形です。

ご存知、ロシア(旧ソビエト連邦)を代表する民芸品、「マトリョーシカ」です。

「ああ、あれね。昔、お父さんが海外出張に行った時のお土産で買ってきたやつだわ」
「なんだか顔立ちが独特でちょっと怖いし、ずっと飾ってあって埃をかぶって色もあせているから、もう捨ててしまおうかしら」

遺品整理や実家の片付けの現場において、こけしや日本人形と並んで真っ先に「処分候補」の筆頭に上がってしまうのが、このマトリョーシカです。多くの方にとってマトリョーシカは、「観光地で売っている安価な木のおもちゃ」や「バラマキ土産」というイメージしかなく、まさか価値があるものだとは夢にも思わないのが一般的です。

しかし、そのマトリョーシカをゴミ袋に放り込む前に、ほんの数秒で構いません。必ず確認していただきたい重要な場所があります。

それは、一番大きな人形(一番外側の人形)の「底(裏側)」です。

もしその底面に、読めない文字(キリル文字やロシア語)で手書きのサインがサラサラと書かれていたり、「USSR」や「CCCP」、「Made in Russia」といった文字が刻印されていたりすれば、その人形は単なる旅行のお土産ではありません。

「ソビエト連邦」という、現在はもう地図上に存在しない国で作られた貴重なヴィンテージ品か、あるいは世界的に著名なマトリョーシカ作家が、気の遠くなるような時間をかけて手描きした「一点物のアート作品」である可能性が非常に高いのです。

この記事では、数多くの骨董品や民芸品を査定してきた買取のプロの視点から、「価値あるマトリョーシカ」の見分け方と、日本の気候ではよく起こる「開かなくなってしまった時」の正しい対処法について、どこよりも詳しく解説します。

目次

ただのお土産と、数十万円の価値を持つ「作家物」の決定的な違い

現在、日本の雑貨屋さんやネットショップ、あるいはロシアの観光地のお土産屋さんで売られているマトリョーシカの多くは、工場で機械的に大量生産されたものです。

これらは、形が均一になるように機械で削り出され、顔や衣装の柄はプリント(シール)で貼り付けられているか、あるいはスタンプで押されたような簡易的な絵付けが施されています。残念ながら、こうした量産品のマトリョーシカは、どれだけ古くても中古市場では数百円程度の価値しかつきません。

しかし、世界中の熱心なコレクターたちが数万円、時には数十万円という高値を出してでも買い求める「作家物(アーティスト作品)」は、量産品とはその成り立ちからして全くの別物です。

まず、素材となる木材(主に菩提樹や白樺)の選定から始まり、作家自身や木地師(きじし)が一つひとつ手作業で削り出します。そして、下地を丁寧に塗り、作家が極細の筆を使って、ルーペや顕微鏡を覗き込みながら、信じられないほど繊細な模様を描き込んでいきます。

瞳の中に描かれた光の反射、頬の微妙な赤み、まつ毛の一本一本、衣装に施されたレースの透け感や刺繍の立体感までが、すべて筆による手描きで表現されているのです。最後に、絵具を保護し、美しい光沢を出すためにニスを何度も何度も塗り重ねて完成させます。

このように作られた作家物のマトリョーシカは、もはや「おもちゃ」の域を超え、「ロシアの宝石」「木の上の真珠」とも称されるほどの芸術的価値を持っています。実家に眠っているその人形が、実は美術館に収蔵されるレベルの作品である可能性もゼロではないのです。

人形をひっくり返して「底」を見てください!お宝鑑定3つのポイント

では、目の前にある薄汚れたマトリョーシカが、単なるお土産品なのか、それとも価値あるお宝なのか、どうやって見分ければよいのでしょうか。専門的な知識がなくても、誰でも簡単にチェックできる3つの鑑定ポイントをご紹介します。

1. 手書きの「サイン(署名)」があるか

まず、一番大きな人形(一番外側の親人形)をひっくり返して、その底面をよく見てください。

そこに、マジックや筆、あるいは焼きペンなどで、何か文字が書かれていませんか?読めないロシア語(キリル文字)であっても、さらさらとした筆跡の手書き文字があれば、それはその作品を描いた作家自身の「サイン(署名)」である可能性が極めて高いです。

絵画と同じで、作品にサインを入れるということは、その作家が「これは私が責任を持って描いた作品です」と証明していることになります。量産品には、基本的に個人のサインは入りません(あってもスタンプやシールです)。

たとえ作家の名前が読めなくても、サインがあるという事実だけで、それが「量産品ではない手描きの作品」である証拠になります。有名な作家のサインであれば、査定額は一気に跳ね上がります。日付や制作地、シリアルナンバーが書かれていることもあり、これらも重要な査定ポイントとなります。

2. 「USSR」「CCCP」という文字があるか

底面に、作家のサインではなく、「Made in USSR」や、キリル文字の「CCCP」(ソビエト社会主義共和国連邦の略称)というスタンプや焼き印、ラベルがあるかどうかも確認してください。

これらの文字は、1991年に崩壊した「ソビエト連邦」時代に作られた製品であることを意味しています。つまり、少なくとも今から30年以上前に製造された「ヴィンテージ・マトリョーシカ」であることの証明です。

ソ連時代のマトリョーシカは、現代のきらびやかで精緻な作家物とは異なり、素朴で温かみのあるデザインや、独特のデフォルメが施された愛らしい表情が特徴です。また、当時の共産主義体制下の国営工場で作られたものには、独特の品質基準や塗料の風合いがあり、これらを専門に集めている「ソ連レトロ(ソビエト・ヴィンテージ)」のファンが世界中に数多く存在します。

当時は安価なお土産だったかもしれませんが、国家が消滅した今となっては、二度と生産されることのない歴史的な資料としての価値も加わり、希少性が高まっています。

3. 入れ子の「個数」が多いほど高い

通常、お土産として売られているマトリョーシカは、5個組(5ピース)や7個組程度が一般的です。しかし、中には10個、15個、20個、時には30個以上もの人形が重なり合っている「多重マトリョーシカ」が存在します。

もし、開けても開けても次から次へと人形が出てくるなら、それは間違いなく名工の手による高級品です。

マトリョーシカの数が増えれば増えるほど、一番内側の人形は米粒のように小さくなっていきます。極小の人形を木材から削り出す高度なろくろ技術(木地師の腕)と、その小さな曲面に顔や衣装を描き込む超絶的な描画技術(絵付師の腕)の両方が揃わなければ、多重マトリョーシカを作ることは不可能です。

数が多ければ多いほど、技術的な難易度が指数関数的に上がり、それに比例して価格も高騰します。一番小さな人形が、虫眼鏡で見ないと表情が分からないほど小さい場合、それは驚くべき価値を秘めている可能性があります。

「開かない!」そんな時、無理にねじらないで

日本の高温多湿な気候は、木製の人形であるマトリョーシカにとって非常に過酷な環境です。木は呼吸をしており、湿気を吸うと膨張し、乾燥すると収縮する性質を持っています。

長年、湿度の高い日本の家屋で飾られているうちに、木が水分を吸って膨張し、蓋と本体がガッチリと噛み合ってしまい、全く開かなくなってしまうことが頻繁に起こります。

「中身を確認したいから」「全部揃っているか見たいから」と、力任せにギュッとねじったり、蓋の隙間にマイナスドライバーやカッターナイフを差し込んでこじ開けようとしたりするのは、絶対にやめてください。

乾燥して経年劣化した木材は非常に脆く、少しの無理な力が加わるだけで、「バキッ」「ピキッ」と音を立てて簡単にヒビが入ったり、割れてしまったりします。また、こじ開けようとして縁(ふち)が欠けてしまうこともあります。

一度ヒビが入ったり欠けたりしてしまうと、たとえ有名作家の作品であっても、その価値は大きく下がってしまいます。美術品としての評価において、「無傷(完品)」であることは非常に重要な要素なのです。

もし開かない場合は、無理をせず「開かない状態」のまま査定に出してください。私たちプロは、専用の道具や技術を使って傷つけずに開ける方法を知っていますし、あるいはそのままの状態でも、重さや音、外側の絵付けのクオリティから総合的に価値を判断することができます。

「開かないから価値がない」と諦める必要は全くありません。

水拭きは厳禁!大切な塗装が溶けてしまいます

長年飾っていたマトリョーシカは、どうしても埃をかぶって薄汚れて見えます。「せっかくだから綺麗にしてあげよう」と、濡れた雑巾やウェットティッシュでゴシゴシ拭きたくなる気持ちはよく分かります。

しかし、これも絶対にNGな行為です。

マトリョーシカの表面は、水溶性の絵の具(ガッシュや水彩)や、水に弱いニスで仕上げられていることが非常に多いのです。水分を含んだ布で拭くと、顔のインクが滲んで表情が崩れてしまったり、ニスが化学反応を起こして白く濁ってしまったり(白化現象)、塗装が剥げ落ちてしまったりします。

また、木地が水分を吸って急激に膨張し、さらに蓋が開かなくなったり、乾燥する過程で割れが生じたりする原因にもなります。

お手入れをする際は、乾いた柔らかい布(眼鏡拭きのようなマイクロファイバークロスがお勧めです)や、柔らかい毛のブラシを使って、表面のホコリを優しく払う程度に留めてください。洗剤やアルコール除菌スプレーなども、塗装を溶かす恐れがあるため厳禁です。

埃まみれでも、全部揃っていなくても諦めないで

「子供が遊んで一番小さな人形をなくしてしまった」
「途中の1個だけ落として割れてしまった」
「日焼けして色が薄くなっている」

そんな状態でも、決して諦めずに見せてください。

確かに完品(全てのピースが揃っている状態)が理想ではありますが、作家物や希少なヴィンテージ品であれば、欠品があっても、残っている人形の芸術的な美しさや歴史的価値だけで、十分に高い値段がつくことが多々あります。特に一点物のアート作品の場合、その絵画的な価値が評価されるため、数が揃っていなくてもコレクター需要はなくなりません。

サイドボードの奥で忘れ去られ、埃をかぶり、誰からも顧みられることのなかったその人形。
その底にひっそりと書かれたサインは、遠い異国の作家から時を超えて届いた「私はここにいます。私を見つけてください」というメッセージかもしれません。

ただのゴミとして処分してしまう前に、ぜひ一度、その底面を確認させてください。あなたの手元にあるそのマトリョーシカが、海を越えて再び誰かに愛される「宝物」として蘇るかもしれません。

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