市松人形は「お腹」を見れば価値がわかる?人間国宝・平田郷陽などの「銘(サイン)」の探し方

実家の和室や床の間、あるいは薄暗い納戸の奥に、おかっぱ頭の日本人形がひっそりと佇んでいませんか?
黒く澄んだ瞳、少し開いた口元、そして人間のようにリアルな肌の質感。これらの特徴を持つ人形は、いわゆる「市松人形(いちまつにんぎょう)」と呼ばれるものです。

市松人形は日本人形の中でも特に存在感が強く、ご遺族の中には「夜中に目が合うと怖い」「髪が伸びるという噂を聞いて不気味だ」と恐怖心を抱く方も少なくありません。そのため、遺品整理の際には「真っ先に供養に出してしまおう」「お寺で燃やしてもらおう」と判断されがちです。

しかし、その判断は、数百万円の価値がある美術品を灰にしてしまう行為かもしれません。市松人形の中には、人間国宝などの名工が手掛けた作品が存在し、それらは単なる人形ではなく、博物館に展示されるレベルの「芸術品」として扱われています。そして、その価値を見分ける秘密は、着物に隠された「お腹」や「背中」にあるのです。

この記事では、買取のプロが教える、市松人形の着物を脱がせて確認すべき「銘(サイン)」の探し方と、高額作家の見分け方について詳しく解説します。


目次

市松人形とは?その歴史と背景

まず、市松人形がどのような背景を持つものなのかを知ることが重要です。その歴史や文化的な意義を理解することで、単なる人形以上の価値を見出すことができます。

市松人形の起源と名前の由来

市松人形の名前の由来は、江戸時代の歌舞伎役者「佐野川市松」に似せて作られたことにあると言われています。佐野川市松は、当時の人気役者であり、その姿を模した人形が大変な人気を博しました。この人形が「市松人形」と呼ばれるようになり、以降、子供の遊び相手や女性の結婚道具として広く親しまれるようになりました。

市松人形の文化的意義

市松人形は、単なる玩具ではなく、家族や子供への愛情を象徴する存在として大切にされてきました。特に、昭和初期に日本とアメリカの親善のために贈られた「青い目の人形」の答礼として作られた市松人形は、国を代表する工芸品として極めて高い評価を受けています。

また、作りが精巧であればあるほど、人の魂が宿っているように見え、「怖い」と感じられることもありますが、それは裏を返せば、職人が魂を込めて作った証拠でもあります。


着物の下に隠された「真実」を確認する方法

ご実家にある市松人形が、お土産品の量産品なのか、それとも名工の作品なのか。それを見分けるための最も重要な手がかりは、普段は見えない場所に隠されています。

着物を少し緩めて「お腹」や「背中」を確認

市松人形の価値を見極めるためには、勇気を出して人形の帯を少し緩め、着物をはだけさせて「お腹」や「背中」の肌(白い部分)を見てみる必要があります。また、足の裏やふくらはぎの部分もチェックポイントです。

そこに、筆で書かれた文字や、赤い印(落款)がないかを確認してください。これらのサインがある場合、その人形は名工の手による可能性が高くなります。


これがあれば大発見!高額買取になる「銘(サイン)」

市松人形の中には、以下のような名工のサインが見つかることがあります。これらの名前が書かれていれば、その人形は骨董品として数十万円、場合によっては数百万円の価値を持つ可能性があります。

平田郷陽(ひらた ごうよう)

平田郷陽は、人形界で初めて人間国宝に認定された伝説の作家です。「生人形(いきにんぎょう)」と呼ばれるほどリアルで生き生きとした表情が特徴で、その作品は国内外で高く評価されています。

朱雀(すざく)

野口朱雀は、非常に繊細で上品な作風で知られる名工です。その作品は、特に女性的な優雅さを感じさせるものが多く、コレクターの間で高い人気を誇ります。

光龍斎(こうりゅうさい)

明治から昭和初期にかけて活躍した名工で、ふっくらとした愛らしい顔立ちが特徴です。その作品は、親しみやすさと高級感を兼ね備えています。

東光(とうこう)

松乾斎東光(しょうけんさい とうこう)は、代々続く名家で、現在もコレクターが多い作家です。その作品は、伝統的な技法と独自の美意識が融合したものとして評価されています。


ボロボロでも、ヒビ割れていても価値は残る

「作家の名前らしきものはあるけれど、状態がひどすぎる……」と思っても、絶対に捨てないでください。

胡粉の劣化は修復可能

市松人形の顔や手足は、胡粉(ごふん)という貝殻の粉で塗られています。経年劣化により、どうしてもヒビが入ったり(ヘアライン)、塗装が浮いてきたりします。しかし、人間国宝クラスの作品であれば、そうしたダメージがあっても価値は残ります。

着物の劣化も問題なし

着物が虫に食われてボロボロになっている場合でも、着せ替えが可能です。オリジナルの着物が残っていれば理想的ですが、なくても人形そのものの価値が損なわれるわけではありません。


絶対にやってはいけないNG行為

市松人形を扱う際には、以下の2点にくれぐれもご注意ください。

顔を水拭きする

胡粉は水に弱いため、濡れたタオルで顔を拭くと塗装が溶けてシミになったり、最悪の場合は顔の表情が崩れてしまったりします。汚れが気になっても、乾いた柔らかい筆でホコリを払う程度に留めてください。

無理に着物を脱がそうとする

銘を確認するために着物をめくる際は、優しく行ってください。長い年月着続けていた着物は、布地が弱っています。無理に脱がそうとすると、着物が裂けたり、関節が外れたりする恐れがあります。帯を少し緩めるだけで十分確認できます。


その人形、お焚き上げの前に一度見せてください

「なんだか薄気味悪いから」という理由で、貴重な文化財が日々失われています。人形供養に出してしまう前に、一度だけそのお腹を確認させていただけないでしょうか。

もしそれが平田郷陽などの名品であれば、それは単なる遺品整理を超えた、文化的な発見です。もちろん、お値段がつかない場合でも、その後の供養や処分の方法についてアドバイスさせていただきます。

出張買取なら、ご自宅の和室に置かれたままの状態で査定可能です。怖いと感じるその人形が、実はご家族に残された大きな遺産かもしれません。

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