実家の子供部屋や、長らく開けていない納戸の奥深くにしまわれていた埃被ったダンボール箱。整理のために開けてみると、体のサイズに比べて頭が極端に大きく、まるでグレープフルーツのような大きな瞳を持つ、ちょっと不思議な雰囲気を纏ったファッションドールが入っていませんか?
「なんだか目が大きすぎて、ギョロっとしていてちょっと怖い……」
「頭の後ろからヒモが出ているけど、何これ?壊れているのかしら?」
そのあまりにも独特なルックスから、生理的に「不気味だ」「可愛くない」と感じてしまい、価値を確認することなくすぐに処分してしまおうとする方が非常に多いこの人形。
この人形の名前は「ブライス(Blythe)」と言います。
もし、その手元にある人形の後頭部に「Kenner」という文字が刻まれていたら、絶対に、何があっても捨てないでください。ゴミ袋に入れるなんてとんでもないことです。
それは1972年にアメリカでたった1年間だけ販売された「ヴィンテージ・ブライス」と呼ばれる幻の人形であり、中古市場では1体で数十万円、状態が良ければそれ以上の驚くべき価格で取引される、正真正銘の「お宝」なのです。
また、2000年代以降に日本で発売された新しいブライス(ネオブライス)であっても、限定モデルやコラボレーションモデルなら定価の数倍になることも珍しくありません。
この記事では、数多くの人形を見てきた買取のプロが教える「ブライスの見分け方」と、なぜこれほどまでに高額査定がつくのかという秘密について、詳しく解説します。
まずは後頭部のヒモを引いてみてください
ブライス最大の特徴であり、他のファッションドールと決定的に違う点は、後頭部から出ているヒモ(プルリング)です。まずは怖がらずに、このヒモを「カチッ」と音がするまで引いてみてください。
すると、どうなるでしょうか。なんと、瞳の色と向きが4段階に変わるのです。
- ピンク(正面向き)
- ブルー(右向き)
- グリーン(左向き)
- オレンジ(正面向き)
このギミック(仕掛け)こそがブライスのアイデンティティです。
もし、長期間保管されていたためにヒモを引いても目が変わらなかったり(アイチェンジ不良)、ヒモが途中で切れてしまっていたりしても大丈夫です。焦る必要はありません。このギミックがあること自体が、その人形がブライスである証拠なのです。
無理に直そうとして分解したり、接着剤を使ったりするのは禁物です。そのままの状態にしておいてください。壊れていても、その希少価値は揺るぎません。
たった1行の文字で決まる!「ヴィンテージ」と「ネオ」の違い
ブライスには、大きく分けて2つの種類が存在します。一つは1972年に製造された「ヴィンテージ・ブライス」、もう一つは2001年以降に復刻・販売された「ネオブライス」です。
どちらもコレクターアイテムとしての価値がありますが、その取引価格が桁違いなのは「ヴィンテージ」の方です。では、どうやって見分ければよいのでしょうか?見分け方は実はとても簡単です。人形を裏返して、背中や後頭部に刻まれている「刻印」を見るだけで判別できます。
1. 幻の「ヴィンテージ・ブライス」(1972年製)
人形の後頭部の下の方、髪の生え際あたりをよく見てください。そこに、6行〜7行にわたる長い英語の文章が刻まれていませんか?
その文章の中に「Kenner(ケナー)」という社名や、「1972」という年号の文字が含まれていれば、それは大当たりです。
1972年当時、アメリカのケナー社から発売されたブライスは、そのあまりに奇抜で斬新なデザインが当時の子供たちには受け入れられず、なんとわずか1年で販売終了となってしまいました。そのため、世に出回った数が極端に少なく、現存している個体が極めて希少なのです。
今では世界中のコレクターが血眼になって探し求めており、状態にもよりますが数十万円という高値で取引されることが珍しくありません。「幻の人形」と呼ばれる所以です。
2. 人気の「ネオブライス」(2001年〜現在)
2000年、パルコのテレビCMキャンペーンにブライスが起用されたことをきっかけに、日本でリバイバルブームが巻き起こりました。これを受けて2001年以降に新たに製造・販売されたのが「ネオブライス」です。
こちらの後頭部には、「TAKARA」や「TOMY」、「CWC」といった文字が刻印されています。ヴィンテージほどの歴史的な希少性はありませんが、それでも侮れません。
特に「CWC限定」などのアニバーサリーモデルや、有名ファッションブランドとのコラボレーションモデルであれば、発売当時の定価を大きく上回り、数万円〜10万円以上のプレミア価格がつくことがあります。
髪がボサボサ、顔がカスタムされていてもOK
一般的な人形の買取では、汚れや傷、改造などは大きなマイナスポイントになります。しかし、ブライスの査定においては、「使用感」や「手を加えられていること」はそれほど大きなマイナスにはなりません。むしろ、それがプラスに働くことさえあるのです。
髪が絡まっている
ブライスの髪は長く、量も多いため、経年劣化でどうしても鳥の巣のように絡まってしまいます。しかし、無理に櫛を通そうとすると、繊細な髪が抜けてしまったり、切れてしまったりします。
査定に出す際は、ボサボサのままで構いません。プロの修復技術や、次のオーナーの手によって綺麗に整えられることが前提となっているため、髪の状態が悪くても買取を断られることはまずありません。
顔が削られている(カスタム)
通常の人形なら、顔を削ったりメイクを変えたりするのは「破損」とみなされ、価値がゼロになることもあります。しかし、ブライスの世界は特殊です。
オーナーが自分の好みに合わせて唇を削って形を変えたり(カービング)、肌をマット(つや消し)にしたり、まつ毛を人間用のものに交換したりする「カスタム」が、一つの文化として定着しています。
素人の拙いカスタムだと減額対象になる場合もありますが、有名なカスタム作家による美しいカスタムや、技術的に優れたカスタムであれば、むしろノーマルの状態よりも高いプラス査定になることさえあるのです。「顔が変わっているから売れない」と諦めないでください。
ボディへの色移り
長い間、色の濃い洋服を着せたままで保管していると、ボディの肌に服の色が移ってしまう「色移り」がよく起こります。特に腕や足、ウエスト周りに青や黒のシミができやすいのですが、これも買取可能です。
もちろん美品の方が高くはなりますが、色移りがあるからといって価値がなくなるわけではありません。
捨ててはいけない「箱」と「カード」
もし、人形本体だけでなく、押し入れからブライスの入っていた「化粧箱(パッケージ)」や、一緒に入っていた「コレクションカード」、「スタンド」などが出てきたら、必ずセットにして査定に出してください。
特にネオブライスの場合、未開封品や付属品が完備されている完品は、コレクターからの評価が非常に高くなります。箱のデザイン自体も凝っているものが多く、箱も含めて一つの作品として扱われるためです。
もちろん、箱がない「裸のブライス」だけでも十分に買取対象ですのでご安心ください。ヴィンテージ・ブライスであれば、箱がなくても本体だけで凄まじい価値があります。
「怖い」からと捨てずに、出張査定へ
「娘が昔集めていたけれど、独立して置いていった。夜中に目が合いそうで置いておくのが怖い」
「遺品整理で出てきたけれど、価値が全く分からないし、正直不気味だ」
そんな理由で、価値ある文化遺産とも言えるブライスがゴミ袋に入れられてしまうケースが後を絶ちません。私たちは、そうやって失われていくブライスを1体でも多く救いたいと強く願っています。
その大きな瞳の奥には、ファッションドールの歴史と、世界中にいる熱狂的なファンの情熱が詰まっています。
出張買取なら、重たい人形を持ち運んだり、梱包したりする必要はありません。ご自宅にお伺いし、玄関先で後頭部の刻印を確認して、その場で「ヴィンテージ」か「ネオ」かを判定します。
もしかすると、あなたが「不気味だ」と思って処分しようとしていたその人形が、今回の遺品整理費用をすべて賄ってしまうほどの、とんでもない価値を持っているかもしれません。
処分する前に、ぜひ一度、勇気を出してヒモを引いて瞳の色を変えてみてください。そして、私たちにご連絡ください。その決断が、思わぬ臨時収入につながるはずです。

